ダイアモンドプリンセス号と小公女
2020年2月17日
今話題のダイアモンドプリンセス号、きらきらしたネーミングがチャーミングですが。由来は児童文学「小公女」のダイアモンドプリンセスです。
英国領インドで育てられたセーラは就学年齢に達し本国の寄宿学校に入学します。父はダイアモンド鉱山を経営している大富豪。セーラーもその気高さから学校の人気者になります。まぁスクールカーストの最上位ってことですね。
そんな中インドで父が死んだ事を知らされます。学校も寄付が途絶えたことから、セーラーの持ち物を没収し下働きにしてしまいます。
しかしセーラーはそんな境遇でも気高さを失わず友人のベッキーとともに辛い生活を乗り越えて行きます。元学友からそうぜつなイジメに会い(アニメ版)ますが実は父の部下であった人がダイアモンド鉱山の経営を受け継いで成功させている事を知り、セーラはその人に引き取られる事で、再び大金持ちに返り咲きます。
セーラはそうした境遇でも「誰も恨んでいません」と気高さを保ち物語は終わります。
日本でアニメ化され大ヒットした物語です。
アニメ版セーラの声優は、カリオストロの城のクラリス、風の谷のナウシカで有名な島本須美さん。姫様といえば彼女ですね。
奴隷の上に成り立っているプリンセス。
「ダイアモンドプリンセス」英国が現地人を奴隷労働をさせ、現地国の産出物を搾取して成り立っている大富豪の娘。それをダイアモンドプリンセスと言います。英国のセレブの世界ではそんな人にキラキラとした憧れを抱いてもてはやして居ますが。一度資産を失うと、途端に奴隷に落とされるという皮肉な物語です。
まぁそれゆえに現代の資産家も身分が転落しないように、必死にあがいて搾取を強めているわけですが。
表向きのテーマは「どんな辛い境遇でも気高さは忘れない」です。
これを踏まえて今回のダイアモンドプリンセス号を見るわけです。
豪華客船の旅。
ものすごくお金持ちが使う船と思われがちですが、映画タイタニックの様なものです。
上甲板にお金持ちの部屋と豪華施設があり、毎夜毎夜パーティが開かれますが、下甲板にはなけなしのお金でチケットを買った庶民が乗っています。
船の中で物理的にヒエラルキーピラミッドが作られているのが面白いです。このダイアモンドプリンセスはセーラの様に「どんな辛い境遇でも気高さは忘れない」となっている所が興味深いですね。病原菌一つで屋根裏部屋に隔離されるわけです。そしてこのDP号カジノ船というのも皮肉で父の鉱山経営の様に一発当てれば大金持ちしくじれば破産という
さて、コロナウィルスが収束した暁には、彼ら乗客は最後どの様な気持ちになるでしょう。
「だれも恨んでいません」となるか「政府の対応が悪い!」となるか、
本当のダイアモンドプリンセスはいるのでしょうか?
金持ちが不平を言うことは見苦しい。
この物語もう一つのテーマは「成り上がりは謙虚さが重要」です。
英国の身分社会はほとんど別民族と言われるほどです。貴族階級と王族、そしてその他の庶民はけっして見えることのない断絶があります。セーラの父も事業家と言えば聞こえのいいですが、所詮身分は庶民です。鉱山で一山当てればもてはやされますが、実際は貴族階級からは「妬まれる」存在です。セーラは勤めて誠実にいる事を身につけました。本物の貴族ならば相手を叩き落とすところまでやったでしょう。しかしセーラにとって今後社交界で生きていく為には、寛容の心を持って接しないと「貴族のコミュニティー」には入れてもらえません。仕返しは「コミュニティからの離反」となるわけです。ここがコミュニティから一人追い出すという仕返し策とはならずに、コミュニティへの参加権をいかに獲得するかがセーラの重要問題です。
そして豪華客船の中での振る舞いが、どうやら彼らのコミュニティーにとってその後の立場を決める、監視された状態になっているのかもしれません。