今更聞けないコロナウィルス用語集
2020年3月30日
コロナ騒動で飛び交っている横文字達。いなお教授が用語の解説を行います。
そして下通りや繁華街のみなさまのご健康を願うばかりです。
●コロナウィルス
ウィルスというのは生物ではありません。タンパク質の塊です。おそらく何かしらの動物の遺伝子から分離して、そのほかの宿主に寄生(遺伝子組み込み)することを行う「機械」のような存在です。人間のDNAのほとんどは過去人類が感染してきたウィルスの情報と言われています。この情報を使って抗体が作られますが今回の新型のウィルスにはまだ、人類は抗体を持っていません。そこで新しく作る「抗原抗体反応」がいわゆる肺炎というわけです。運良く抗体を作ることができた人は生還しますが、作れなかった人は10%の確率で死亡するようです。
●クラスター
感染者集団と訳されていますが、あまり適切な訳語ではありません。
※疫学におけるクラスター(英: disease cluster、疾患クラスター)は、時間的および地理的の両方の観点で、近接して発生する特定の疾患または障害が異常に高い発生率である集団
集団感染することをクラスターと勘違いしている人が多いですが、
「感染を引き起こす場所」とした方が最も近いです。たとえば駅だと
通常の駅のホームは閑散としたひらけた場所ですが、朝の通勤時8:45分の熊本行きの水前寺駅のホームは通勤者でごった返します。この状態をクラスターといいます。人と場所と時間がセットになる概念です。
なぜこのような言葉を使うかというと、もし感染者が見つかった場合、濃厚接触者を見つけ出す時に、その人が含まれるクラスターに対して、検査をし、そのクラスターを分離するという事を行います。
つまり「水前寺駅に8:45熊本行きに乗った人は検査を受けてください」という風になるわけです。
●ロックダウン
「蟄居」とした方がいいでしょう。
アメリカの刑務所では刑務作業がなく、通常区画に別れた集団生活を行いますが、暴動や問題が起きた場合「ロックダウン」と呼ばれる自分の監房に入り待機命令が出ます。
通常の例としては「戒厳令」の元で行われる「外出禁止令」がそれに当たります。
なぜ小池ゆりっぺ知事がカタカナを使うかというと、日本語で言えば「戒厳令」で現在この法律がありません。日本では2・26事件の東京が最後の使用例です。
この場合戒厳司令官が任命され、国民の全ての生活が統制されます。ここまでやると危ないので「要請」や「ロックダウン」という軽い言葉でなんとか運用しようとしているのです。
ロックダウンにはいろいろなバリエーションがあります。点と線と面です。
今回のダイヤモンドプリンセス号は「点の封鎖」でした。
飛行機の受け入れ禁止は「線の封鎖」です
今回問題になっているのは東京という「面の封鎖」になります。
東京への侵入、また脱出が事実上禁止されます。自衛隊による封鎖作戦になるでしょう。
この段階では東京都内の移動は可能だと思われますがその後に「各区」からの移動が禁止されます。そこから町外への移動禁止、敷地内からの移動禁止と、どんどん範囲を絞っていき、他人との接触がないようになります。
●オーバーシュート
金融用語で限界線を突破した値動きに対して使われていました。
今回では病院の病床数に対して入院患者数が溢れることをオーバーシュートと言います。ちなみに昨日の日曜日で東京・大阪・千葉・神奈川は感染症対応の病床は、オーバーシュート起こしており、これ以上の患者は一般病棟でなんとか対応しますが、当然同室の患者への二次感染や同病棟への感染の確率が上がります。病院側が患者の受け入れを拒否しだすと、重症者が街に出て、爆発的感染源となる事が考えられます。
●サージカルマスク
お医者さんが使うタイプのマスクで昔の四角いガーゼのマスクではなく立体的な今風のマスクです。
●ワクチン
ウィルスの残骸や無害化したウィルスが入った溶液の事で、人間に摂取させて抗体を作り出すよう仕向ける薬です。
通常は感染予防に使いますので感染者が使っても役に立たないどころか、より重症になります。
これに対してウィルスの増殖を阻害する薬を「血清」と言います。この中には抗体が溶け込んでおり、感染者に摂取させます。
●パンデミック
エンデミック(地域流行)
エピデミック(流行)
パンデミック(汎発流行)
といった段階を踏みます
エピデミックの段階である地域で感染が広まる事を「アウトブレイク」といいます。
このアウトブレイカーが拡散することでパンデミックを引き起こします。
「わかりやすい日本語を!」無理です
高校の時習った「サイン・コサイン・タンゼント」を日本語に訳せと言っているようなもので。ギターを「六弦琵琶」と言い変えろと言う様なものです。
ウィルスを「自然発生的遺伝子転送装置」とでも言いましょうか。
今時誰でもインターネットで調べられるので、解らないことは調べればいいのです。
新しい概念で作られる用語は、まずその概念を勉強しなければいけません。単に日本語に訳しても意味は解らないでしょう。「自然発生的遺伝子転送装置」と言われても余計解らないだけです。
クラスターも感染者集団と訳してしまうと、その人だけ悪者にすれば良いという風潮になり、実は自分も近似値のクラスターに入っているかもしれません。
そういった場所や時間帯という要因が重要なのです。どうしても訳するなら
「感染集合体」となります。人がいなくなってもエアゾル感染など、その場所に由来する感染が出る可能性があるのです。
●エアゾル感染
今回もっとも勘違いされているのがこのエアゾルでしょう。
このエアゾル感染が注目をあびたのはノロウィルスです。嘔吐物が乾燥し粉状になって飛散したさいその粉の中にウィルスが感染力を維持したまま生息していたことでエアゾル感染が疑われました。
この手のウィルスは空気に触れると感染力を失います。
しかし唾液やこういった排出物の中では感染力を失わず生き続ける事があります。
わかりやすく言うと、ウィルスが宇宙船に乗って生きながらえる様なものです。宇宙船から出ると死んでしまいます。
こういったエアゾルは粒子的には大きいので
マスクやゴーグルで防ぐ事ができます。
またこういった物に触らないようにしなければいけません。
これも飛沫感染といった単純に日本語に訳すことも適当ではありません。
感染者が食べていたパンくずなどにも生息できてそこから感染するケースもあります。
言葉は丁寧に理解しないと間違った行動を起こす原因になります。
●キャリア
就職とかでも使いますがこの場合は保菌者(感染者)という意味です。
感染のメカニズムは難しいですがウィルスの受容体が人間の細胞にあるタンパク質と連結し,RNAを細胞内に転移させた状態を感染といいます。ただしこれも適切な訳し方ではなく、感染前の「保ウィルス状態」にも当てはまります。
最近では「無自覚感染者」といった言い方もする様ですが
感染前の場合もあるので訳し方が難しいです。
「ウィルスが感染した、しないに関わらず、体に入った状態」というのが日本語訳です。
ちなみに感染して一個の細胞の中で大人しくRNAの複製を作るべく栄養を溜め込んでいる状態を「潜伏期間」と言います。一般的には潜伏期間は人間の細胞の中で静まり返っていますので、人に感染する事は無いと言われますが、粘膜感染や性交感染など細胞が直接他人に移動する場合はこれに当てはまりません。
なので今回は潜伏期をすぎて発症し、ウィルスが増殖して体内を移動しているが、症状となるものが出ていない「無自覚感染者」が伝染を引き起こしていると考えられています。
●トリアージ
峻別といってよいでしょうか。これは大規模災害の時有名になりました。
「助かる人と助からない人を見極め、助からない人は見捨てる」
「処置すれば命が助かる人と処置しなければ腕をなくす人は腕より命を優先する」
といった処置が行われます。
今回は軽度のトリアージを行なっています。重症者以外は、処置しない。といった方針です。よく「検査をしていない」と言われていますが、検査をしてもそもそも処置しません。無駄な事はしないが原則です。
重症になって初めて検査と処置を行うことで医療崩壊を極力抑えるという方法で行なっています。それに伴って自粛要請が行われているのです。
ちなみに重篤になった場合の生存率は10%程度、これをトリアージを行うとすると
重症者が重篤化したばあい治療は打ち切られます。
また感染者が爆発したばあい。100人が運び込まれた場合、その中から一人だけ選んで治療する。その他はモルヒネでほったらかしにし、運良く順番がくれば治療を行う。という風にします。
基本医師法では目の前に患者がいた場合、必ず治療を行わなければいけない。と法律で決められています。相手が貧乏人でも医者は治療は開始しなければいけないのです。しかしアウトブレイクするとそんな事をいっていられません。
ここで政府はトリアージを事前に認めているわけです。
現状、東京都・大阪府・千葉県・神奈川県は遂に病床数がオーバーシュートしました。これ以上あたらしい感染者のうち重症になった人は、トリアージが行われます。すでに人工呼吸器をつけている人がこのまま助かるのか、それともこの新しい患者の方が助かるのか。医者の一存になります。
もし新しい患者に人工呼吸器をつけて前の患者が死に、新しい患者も助からなかった場合でも。医者の責任ではありません。
もともと双方助からない人だったと扱います。
さて、いかがだったでしょう熊本Kにふさわしくない暗い内容になりました。
熊本県では指定感染病床は48床あり現在は7床埋まっています。例えば東京の様に1日に64人の感染者が急に出てくると、熊本ではオーバーシュートです。
この中で21人は自宅に帰ってもらうしかありません。結構深刻な問題なんです。
なるべく夏には明るい街を取り戻したい気持ちでいっぱいなので
これ以上の感染を防ぐには無自覚感染者が完治するまで引きこもってもらうのが重要です。実際東京や大阪からの旅行客は結構危険な存在でもあるんです。